ILLUSTRATION NOVEL 相性1%の恋 — 相性1%で恋愛は成立するのか…?

#16 相性1%の恋

作:舟崎泉美

共同生活最後の日、私たちは決断の時を迎える。
今日、私たち相性1%のカップルは、今後の共同生活を終えてもカップルを続けるかどうかを決める。

「ごめん。私たちは合わないよ。最後まで相性1%だった。でも、蒼太のことは嫌いじゃないからね。幸せを祈ってるよ」
私たちの前に決断の時を迎えた結愛ちゃんたちカップルは、お別れを選んだ。

結愛ちゃんが私の元へと近づいてきた。
「次は陽葵たちだね。がんばって!」
結愛ちゃんは、私を笑顔で送り出す。

私は大きく深呼吸をして碧くんの元へと向かった。
私は碧くんの前に立つと、ポケットから手紙を取り出した。
「うまく想いを伝えられなかったら困ると思って、手紙を書いてきたんだ。読むね」
昨夜、碧くんへの素直な気持ちを手紙にまとめていた。一言一言に碧くんへの想いを込めて読む。

「私はこの恋愛リアリティショーに参加するまで、相性1%の恋なんてきっと無理だって思っていました。でも、碧くんと出会って、失敗をおそれていた私が、これまで見ることのできなかった、私の知らない景色をたくさん見ることができました。はじめての料理に挑戦したり、お互いに短所を長所で補い合って謎解きデートをしたり、番組の進行を無視しちゃったり。それは相手が碧くんだったから。そう思うと、たった1%と思っていた相性が、とても特別に想えるようになりました。そして、相性よりもっと大事なことがあると思いました。それは、失敗したくない気持ちに惑わされず、自分の気持ちに正直に生きること。だからもう一度言います。私は碧くんが好きです。碧くんと、これからもずっと一緒にいたい」
私は手紙を読み終えると、碧くんに笑顔を向けた。

「次は碧くんの番だよ。教えて本当の気持ち」

#16 相性1%の恋

Illustrated by 和遥キナ

碧くんは、大きく深呼吸してから話しはじめた
「俺は、傷つくのを恐れて新しい恋愛を踏み出せない自分が情けなくて嫌だったから、あえて厳しい恋愛に挑んだ。なのに、相性1%なら失敗しても傷つかないって言われた時に、自分とは違うって思った。でも、違うからこそ、陽葵に惹かれていく部分もあった。最後のデートで陽葵はフラれるって思いながらも告白してくれたんだと思う。それって、陽葵も傷ついてでも恋愛したいって思ってくれたからだよね? そう思った時に、やっぱり、俺はこれからも陽葵と一緒に過ごしたいと思った。相性1%から、はじまる恋もあると思ったんだ。……葉月碧は、小鳥遊陽葵が好きです。俺は、これからも陽葵と一緒にいたい」

碧くんが話を終えると、私たちを取り囲んでいた他の参加者から歓声があがった。
たくさんの「おめでとう!」が聞こえる。

「良かったじゃん! 恋のライバルとしてはすごくうれしいよ。すごくお似合いのカップル!」
その中には、結愛ちゃんの声もあった。結愛ちゃんも私たちを祝福してくれている。
ようやく想いが報われた。勇気を出して参加して良かった。

私は改めて、碧くんの顔を見た。
「俺は陽葵が好きだ」
碧くんは私に、とびきりの笑顔を向ける。
「私も碧くんが大好き」
私も碧くんに向かって、とびきりの愛を伝えた。

今日から、私と碧くんの恋がはじまる。
1%しかないって考えるのは簡単だ。でも、その1%の捉え方で、世界が変わることもある。1%を信じた私たちは、きっと、これから先、一緒に想像もしていなかったような未来を歩んで行くに違いない。

#16/16

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和遥キナ

和遥キナ

青春の一瞬の光や空気感を表現する演出が特徴的な、フリーランスイラストレーター。装画、グッズイラスト、広告向けイラスト、コンセプトアートの制作を中心に手掛ける。
現在は漫画にも挑戦中!

X@kazuharukina