#15 勘違い
扉を開けると、そこにいたのは結愛ちゃんだった。
「結愛ちゃん……」
結愛ちゃんは、私を見て驚いた顔をした。
「どうしたの? なんで、泣いてるの?」
「いや……ちょっと……」
私がなんて言ってごまかそうかと戸惑っていると、結愛ちゃんはそっと私を抱きしめた。
「借りてたヘアアイロン返しに来たんだけど……。陽葵のことほっとけないよ。良かったら話す?」
結愛ちゃんの言葉に、私は「……うん」と言って、結愛ちゃんの胸の中で頷いた。
私と結愛ちゃんは、部屋で話をした。
「実はね……」
私は今日のデートでの出来事を全て話した。恋のライバルである結愛ちゃんに話すのは抵抗があったけど、結愛ちゃんは聞き上手で、気付けばどんどん話を続けていた。
「ごめんね、こんな話しちゃって。気分悪いよね? 2人は両思いなのに……」
その時、結愛ちゃんは不思議そうに私の顔を見た。
「両思いって誰と誰のこと?」
「結愛ちゃんと碧くんだけど……」
結愛ちゃんは驚いたような表情を見せる。
「もしかして、この間、私たちがテラスで話してるの聞いてたの?」
「うん、ごめん。盗み聞きするつもりはなかったんだけど……」
結愛ちゃんは、大きくため息をついてから言った。
「……ったく。呆れちゃうよ」
結愛ちゃんのがっかりしたような言い方に戸惑う。
「どういうこと?」
「碧と私は両思いじゃない」
「隠さなくていいよ。だって、私は聞いちゃったんだし」
結愛ちゃんは首を横に振りながら続けた。
「碧は、私を人間として好きだって言ったんだよ。相性99%っていうのも、きっと人と人との相性だって」
「えっ、ウソ……」
驚いて思わず言葉に詰まってしまう。
「ウソじゃないよ。早とちりしちゃったんだよ」
真実を知ってほっとすると同時に力が抜ける。
「一人で勘違いしてたなんて……」

Illustrated by 和遥キナ
「私は失敗しちゃったけど、陽葵には成功してほしい。私は相性99%の人とうまくいかなかったんだもん。何が成功するかわかんないよ。人生って想像よりもずっと難しい。でも、想像できないから楽しいんだよね」
そう言いながら、結愛ちゃんは笑った。
その顔は今まで見た、どの結愛ちゃんよりも輝いて見えた。