ILLUSTRATION NOVEL 相性1%の恋 — 相性1%で恋愛は成立するのか…?

#13 ラストデート

作:舟崎泉美

私は慌てて自分の部屋へと駆け戻った。
「もうどうすればいいの……」

今更、自分の気持ちに気付いても遅すぎる。2人の邪魔なんてできないんだから。私はベッドの上で枕に顔を埋めて泣いた。声が漏れないように一晩中、泣き続けた。

碧くんとうまく話せないまま、最後のデートを迎えた。
「ここが陽葵の育った街?」
「うん、今日が最後だから、碧くんにも見せたくって」
最後のデートは、私の生まれ育った街を案内する。

#13 ラストデート

Illustrated by 大宮いお

「海の見える街か。うらやましいな」
「碧くんはどこで育ったの?」
「俺は山育ち。田舎生まれだから、田んぼと畑ばっかりで……」
「なんか意外……」
「それっていい意味でってこと?」
「あっ、うん。いい意味でだよ。なんか都会の洗練されてる感じがあるなって」

まだまだ碧くんについて知らないことはたくさんある。もっと知りたかった。私のことも知ってほしい。たとえ、結ばれない運命でも、最後まで碧くんと向き合いたい。

「あのね、前に中学の時に先輩にフラれたって話したでしょ?」
私は、これまで封印していた自分の過去について話しはじめた。
碧くんは、優しく頷きながら私の話を聞いていた。

「私ね、その先輩に失恋して以来、人を好きになることを避けてきた。だって、誰も好きにならないことが、傷つかない一番の方法だって思ったから……でも、間違いだった」
そこまで言うと、気持ちを抑えきれなくなった。

「私は碧くんが好き。大好き……」

もう自分の気持ちにウソはつけない。

#13/16

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大宮いお

大宮いお

埼玉県在住。
文芸書籍の装画を中心に制作しています。
光と余白を活かした空気感の表現を追求しています。

X@omiya_io