#13 ラストデート
私は慌てて自分の部屋へと駆け戻った。
「もうどうすればいいの……」
今更、自分の気持ちに気付いても遅すぎる。2人の邪魔なんてできないんだから。私はベッドの上で枕に顔を埋めて泣いた。声が漏れないように一晩中、泣き続けた。
碧くんとうまく話せないまま、最後のデートを迎えた。
「ここが陽葵の育った街?」
「うん、今日が最後だから、碧くんにも見せたくって」
最後のデートは、私の生まれ育った街を案内する。

Illustrated by 大宮いお
「海の見える街か。うらやましいな」
「碧くんはどこで育ったの?」
「俺は山育ち。田舎生まれだから、田んぼと畑ばっかりで……」
「なんか意外……」
「それっていい意味でってこと?」
「あっ、うん。いい意味でだよ。なんか都会の洗練されてる感じがあるなって」
まだまだ碧くんについて知らないことはたくさんある。もっと知りたかった。私のことも知ってほしい。たとえ、結ばれない運命でも、最後まで碧くんと向き合いたい。
「あのね、前に中学の時に先輩にフラれたって話したでしょ?」
私は、これまで封印していた自分の過去について話しはじめた。
碧くんは、優しく頷きながら私の話を聞いていた。
「私ね、その先輩に失恋して以来、人を好きになることを避けてきた。だって、誰も好きにならないことが、傷つかない一番の方法だって思ったから……でも、間違いだった」
そこまで言うと、気持ちを抑えきれなくなった。
「私は碧くんが好き。大好き……」
もう自分の気持ちにウソはつけない。