#12 ルール違反
「私は碧に恋してる。碧となら恋愛をはじめられる」
結愛ちゃんが言ってた『ルールを破る』って、このことだったの?
碧くんと恋愛をはじめることが、自分の気持ちに正直になることだなんて思わなかった。
「そんなこと言っていいのか? カメラ回ってるんだぞ。もし配信で使われたら、炎上する」
碧くんは、明らかに戸惑った声を出した。
「それが告白の答え?」
結愛ちゃんが、少し苛立ったような口調で聞くと、碧くんは焦るように答えた。
「そんなこと急に言われても。俺は共同生活がはじまって陽葵のことだけを考えて、他の人と恋愛関係になるなんて……」
私のことだけを碧くんが考えてた……?
「だったら、これから考えてよ。番組で恋愛する相手はルールで決まってる。でも、人生にルールなんてないんだから」

Illustrated by yomunashi
結愛ちゃんは碧くんに、本気の言葉を投げかける。
結愛ちゃんと碧くんはお似合いのカップルだと思う。2人とも背が高くてすらっとしてカッコいいし、場を明るくする華やかさがある。それになによりも、自分の気持ちをわからないフリをしていつまでも逃げ回ってる私なんかより、結愛ちゃんの方が碧くんには合ってる。って、わからないフリ……?
「わかった。考えるよ……」
碧くんは真剣な表情で続けた。
「いや、もう考えた。確かに俺と結愛は気が合う。相性99%も納得だ」
結愛ちゃんが、息を飲むのが遠目でもわかった。
「俺も結愛が好きだ」
碧くんが、そういった瞬間、結愛ちゃんの顔がぱあっと明るくなった。
胸が締め付けられて、これ以上は聞いていられない。
そうなんだ。私ってわからないフリをしてるだけで、本当は自分の気持ちをわかってるんだよ。私は碧くんが好きなんだ。だから胸が苦しいんだよ。