#10 これは恋?
「今日、一緒に過ごして、これまでと違った陽葵が見えた気がした。今までは友だちみたいなところもあったと思う。でも、もうこの関係は終わりにしたい。改めて言う、陽葵を好きになってもいいかな?」
碧くんは真剣な表情で私を見つめて言った。突然のことに頭がパニックになる。
碧くんはきっと、私に恋愛をはじめる覚悟があるか聞いてるんだと思う。
正直、自分の気持ちがもやもやしてわからない。けど、あと一歩、踏み出したい気持ちもある。なのに出てくる言葉は、私の気持ちとはかけ離れていた。
「本当にうれしいよ。ありがとう」
碧くんは私の言葉を聞いて寂しそうに笑った。胸がぎゅっと痛くなった。
その日の夜、部屋に戻った私は無気力だった。
私だって碧くんと、友だち以上になりたかった。なのに、なんでありがとうしか言えなかったんだろう。思ってることもうまく表現できなくて、もっと距離を近づけたいのに、いつもなんだかこわくって。今の関係が続くのが良いって思ってる。向き合うことから逃げ続けたのは自分なのに、なんだか胸が苦しくて、うまく息ができない……これは恋なのかもしれない。

Illustrated by 眩しい
「恋って苦しい」
その時、寂しそうに笑った碧くんの笑顔が頭に浮かんだ。
このままじゃダメだ。
もっと、下手でも不器用でも碧くんにちゃんと想いを伝えないと。
私は座っていたベッドから立ち上がって、部屋を出た。
「碧くん、部屋にいるかな?」
私が碧くんの部屋へ向かっていると、テラスへ行く碧くんの後ろ姿が見えた。
こんな時間に、どうしたんだろう?
声をかけようとついてくと、碧くんが誰かと話しはじめた。
誰かと待ち合わせしたのかな? ……って、結愛ちゃん!?