#08 自分の気持ちに正直に
私と結愛ちゃんはテラスで話すことにした。
「ねえ、碧とうまくいってるの?」
唐突に、結愛ちゃんは切り出した。
「うまく……いってるよ。友だちとしてはね……」
私が答えると結愛ちゃんは不思議そうに言った。
「どういうこと……?」
「恋愛としては、全然ダメなんだ……」
私が正直に話すと、結愛ちゃんはため息をつきながら言った。
「やっぱり、相性1%って難しいよね。私は恋愛が主な目的だったけど、参加して有名になれればいいなって期待もあった。だから、番組の趣旨に沿うように頑張ってた。でも、無理してたら、辛くなっちゃった……。私って自分にウソつくの嫌なタイプだし……。慣れないことするもんじゃないなって思った……」

Illustrated by 新水(にいな)
そこまで言った結愛ちゃんは深呼吸して続けた。
「だからね、自分の気持ちに正直に行動しようと思う。たとえルールを破っても……」
結愛ちゃんの言う『ルールを破る』ってのは、恋愛リアリティショーなのに恋愛を放棄するってことかな。確かに、それってルール違反かもだけど、自分の気持ちにウソついてまで無理する必要はないと思う。
「正直な気持ちで動くってカッコいいと思う。自分の意志をしっかり持ってて、すごいよ。そういうところ尊敬しちゃう」
私が伝えると結愛ちゃんはにっこりと笑った。
「ありがとう。そう言ってくれると勇気出るよ」
結愛ちゃんは本当にカッコいいな。
でも、結愛ちゃんをカッコいいと思えば思うほどに、私は結愛ちゃんと違う。私はルールに守られた範囲でしか動けない人間なんだって思う。
一通り話した結愛ちゃんは、笑って聞いてきた。
「陽葵は自分の気持ちに正直に動いてる? 碧とうまくいってないって言ってたけど、碧のこと好きなんだよね?」