ILLUSTRATION NOVEL 相性1%の恋 — 相性1%で恋愛は成立するのか…?

#06 恋をはじめるのがこわい

作:舟崎泉美

扉を開けると、そこにいたのは碧くんだった。
「遅くにごめん」
私たちはテラスに行き話をする。
「寒かったかな? これ、上着着て」
1月の冬空の下は、ストーブがあるっていっても寒いかも。
私が碧くんに借りた上着を羽織ると、碧くんは話しはじめた。

「あの……今日の料理対決。すごく楽しかったよ。はじめは相性1%って難しいって思った。でも、2人で食べたことのない料理を見つけて作りはじめたら、これまでにない新しい世界に触れられてすごく新鮮だった。相性1%も悪くないなって思ったんだ」
そこまで言った碧くんは、急に真剣な目をして私を見つめた。

「で、本題なんだけど……」

#06 恋をはじめるのがこわい

Illustrated by けけ

碧くんの瞳にドキッとする。こんな夜中に話すことって、きっと大事なことなんだよね。
「陽葵が『逆境ラブマッチ』に参加したのはなんでなの? 聞きそびれたから……」
あの時、ミッション開始になって話が途切れたから、本当のことは話さなくてもいいかなって思ってたんだけど、碧くんはずっと気にしてたんだ。
「俺は……陽葵を恋愛対象として見たい。だから、陽葵をもっと知りたいんだ」

碧くんは、自己紹介の時に過去に大きな失恋をしたって話してた。だから、恋をはじめるのに慎重になってる。私だって一緒だよ。
碧くんの真剣な目を見た私は、逃げちゃダメだって思った。
伝えなきゃって、思ったんだ。

「私が参加した理由は、相性1%なら失敗しても傷つかないと思ったから」
碧くんは驚いたような、戸惑ったような顔をした。でも、もう引き下がれない。

「私はいつも失敗しない道ばかり選んできた。おかげで、高校、大学、就職先も悪くないところに入れた。でも、失敗しない人生を選んだから、幸せになれたの? って聞かれると違う」
碧くんは、黙って私の話を聞いている。

「それは恋愛でも一緒で、中学の時に好きだった先輩に告白してフラれて、すっごく傷ついて以来、恋するのがこわくなった。あれから、ずっと恋するのがこわいんだ……でも、こんな自分が嫌だなって思う時もあって……」
私が、そこまで話すと碧くんは口を開いた。

「恋をはじめるのはこわいよ。傷つくのもこわい。でも、俺はいつまでも過去を引きずりたくないって思って参加したんだ。だから、何が言いたいかって言うと……。俺と陽葵は考え方が違うかも……」
碧くんの顔は、がっかりしたように見えた。

勇気を出して次のステップに進もうとして恋愛リアリティショーに参加した碧くんと、傷つくのがこわくて保険をかけるように参加した私……まるで違う。
碧くんががっかりするのもしょうがない気がした。

#06/16

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けけ

けけ

黄色大好き、イラストレーター
多摩美術大学 グラフィックデザイン学科卒業
デザイン制作会社にてグラフィックデザイナーとして勤務
退社後フリーランスのイラストレーター・デザイナーとして活動中!女の子とうさぎみたいなキャラクターを描いています!

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