ILLUSTRATION NOVEL 相性1%の恋 — 相性1%で恋愛は成立するのか…?

#04 新しい世界

作:舟崎泉美

私の人生、何かを選ぶ理由は失敗しないことが最優先だった。
でも、失敗しないことばかりを基準に決めてたら、自分が望んでいる人生と違う気がしていた。今日もみんなに食べてもらいたいとか、自分が作りたいじゃなくて、失敗しないことを理由に選んでいた。こんなネガティブな選択じゃ、碧くんががっかりするのもわかる気がする。

「失敗しないから作りたいってのは、俺とは考えが違うけど、相性1%なんだから、違いを楽しむのもアリだよな」
碧くんは気持ちを切り替えるように、笑顔を見せてくれた。

私も気持ちを切り替えようと、碧くんに提案する。
「ねえ、良かったらラーメンにしない?」
碧くんに合わせたつもりだった。でも、碧くんの反応は予想外だった。
「いや、いいよ。俺のことは気にしないで」
ラーメンがおいしそうだなって思ったのは本心だった。でも、この流れだとやっぱり嫌かな。

「でも、私もグリーンカレーになってもうれしくないって言うか……」
私がつぶやくと、碧くんは大きく笑った。
「ははっ、はじめて気が合ったな」
確かに、気が合ったのははじめてかも。

「よし、ラーメンもグリーンカレーもヤメだ! 違うものにしよう」
「それもそうだね。じゃあ、今まで食べたことないものはどうかな? それなら2人とも思い入れもないしスムーズに決まりそう」

私は碧くんに伝えた。これまでの価値観を捨てて、2人で新しい世界を切り開く方が、よっぽど意見が割れない気がしたからだ。
碧くんも私の意見に賛成してくれて、私たちはタブレットを使ってレシピを探すことにした。

「お互いに行ったことない国の料理とかどう?」
「それなら、2人とも食べたことないね」
私たちは、悩んだ末、ペルー料理の牛肉とポテトの炒めもの『ロモサルタード』を作ることにした。

メニューを決めた私たちは、早速、買い出しに出かけた。
「牛肉にじゃがいもにタマネギにパプリカに……これで、忘れ物ないよね?」
「ああ、大丈夫だと思う」

#04 新しい世界

Illustrated by てんてこ

私たちは、ロモサルタードの材料をカゴに入れてレジに持って行く。
「5678円になります。支払いはどうなさいますか?」
店員に支払い方法を聞かれた私は、カードを取り出す。

「P-oneカードでお願いします」

私たちが買い物を終えた時だった。
「あれ、結愛ちゃん……?」
スーパーに結愛ちゃんが入ってきた。それも一人で。
「陽葵!」
結愛ちゃんも私に気付いたみたい。
「ちょっと聞いてよ! 本当にひどいんだから!」
結愛ちゃんは、怒った口調で話しはじめた。

#04/16

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てんてこ

てんてこ

フリーのイラストレーターとして活動しています。
主にMVイラスト、グッズイラストなどを手掛けています。
おとぎ話や郷土玩具をモチーフにしたイラストを描くのが好きです。

X@tenteko_mai51